店長の土づくりを学ぼう!!

施肥を行うということ

農業は、土壌から栄養を吸収し生育した農作物を人間が生活や生きていくために収穫する行為

N・P・K・Ca・Mg等の肥料を土壌へ施して安定かつ持続可能な農業とする

*肥料は種類や役割があり肥料の基礎知識を理解する
*肥料の他に土壌改良資材もある!⇒堆肥や腐植など
*肥料の特性と土壌の関係を理解して農業を続ける!

人間が施すもの⇒肥料 土壌が持つもの⇒肥料分

土壌は何から出来ている?

  • 無機物:粘土と砂
  • 有機物:植物、動物の死骸、微生物、腐植
  • 粘土と砂の比率による分類

 砂土(さど):土壌に含まれる粘土が12.5%未満のもの
  ⇒ほとんどザラついた感触
 砂壌土(さじょうど):土壌に含まれる粘土が12.5~25%のもの
  ⇒ザラついた中に一部ツルツルした感触
 壌土(じょうど):土壌に含まれる粘土が25~37.5%のもの
  ⇒ツルツルとザラついた感触が半々
 埴壌土(しょくじょうど):土壌に含まれる粘土が37.5~50%のもの
  ⇒ツルツルした感触だが最後にザラついた感触がある
 埴土(しょくど):土壌に含まれる粘土が50%を超えるもの
  ⇒ほとんどツルツルした感触

上に記したものほど排水がよいが、保水力・保肥力が弱い

粘土鉱物や腐植、地域によって土壌特性は異なる

畑の土の重さを考える

畑の土の重さを考える

畑10aあたりの土の量 約100トン

土づくりの三要素を考える

土づくりの三要素を考える

土づくりの三要素を考える~生物性その1~

  • 10aの圃場には約500~700kgの土壌微生物
     ⇒うち80%は水分
     ⇒残りは炭素とチッソ成分で約10kg
  • 土壌微生物は増殖と死滅を繰り返し作物にチッソ(栄養素)を供給する
     ⇒チッソ成分の約半分は土壌微生物が保持

土づくりの三要素を考える~生物性その1~

土壌中の微生物はC/N比と関連(後述)

*土壌微生物の活動と関わること

肥料の分解肥効速度
病害虫への影響
 ⇒病害は糸状菌によるものが多い
 ⇒糸状菌を捕食するのは“放線菌”

土づくりの三要素を考える~生物性その2~

  • 生物性を改善するためにすべきこと!

  1. 堆肥の投入 ⇒ 農業書ではこれだけしか記入がない
    (良質な堆肥の判断基準は?)
  2. 良質の微生物資材を投入して安定させること
    ⇒ 豊富な含有量の “ミラクル酵素”の投入
  3. 同時に耕起なども行い物理性改善も行う

土づくりの三要素を考える~生物性その2~

土壌中の微生物で...植物の健康が左右される!

良い土壌条件(微生物サイド)

  1. 植物の発根を促すための整備
  2. 団粒構造
  3. 堆肥の投入(腐植物質)

土づくりの三要素を考える~化学性その1~

  • CEC(陽イオン交換容量:塩基置換容量)
    どれだけ肥料分を保持できるか、保肥力目安の指標
  • 土壌は-(マイナス)の電荷を持っている
    プラスのイオンは土壌に保持される
     カルシウム(Ca2+),マグネシウム(Mg2+),カリウム(K+),アンモニウム(NH4+)
     CEC大:マイナスの電荷が多く、保肥力大
     CEC小:砂質土の特徴、保肥力小、肥料が流亡しやすい

土づくりの三要素を考える~化学性その1~

CECは土壌固有の特徴であり急激に改善することは困難!

腐植(堆肥)や粘土鉱物(ゼオライト等)
 ⇒団粒構造となり肥料持ち向上

砂質土壌:10以下
通常では10~20(日本の土壌)
ウクライナ:チェルノーゼムは50~60

土づくりの三要素を考える~化学性その2~

  • EC(電気伝導度)
    ⇒肥料成分の含有量、ハウス等では重要!
    ⇒土壌中の硝酸態窒素と関係
    ECの値が低:土壌中の肥料分が少ない⇒通常施肥
    ECの値が高:濃度障害で生育阻害⇒施肥不可
    砂質土壌では塩類集積による障害が発生しやすい!

土づくりの三要素を考える~化学性その2~

ECの改善は難しい

クリーニングクロップ
 ⇒イネ科作物(緑肥)
潅水による塩類の溶脱化
土壌除去、深耕、天地返し

露地栽培ではあまり気にしなくても大丈夫なのか?

土づくりの三要素を考える~化学性その3~

  • pH(水素イオン指数)
    ⇒酸性、アルカリ性 通常の土壌は5.5~6.5程度
    ⇒低(酸性:5.5以下になると)生育が阻害されるものもある
     リン酸欠乏(アルミ.鉄と結合)、塩基(Ca.Mg)の流亡、Mn.Fe.Cu.Znの過剰障害、微生物の活動が鈍化

土壌pHの改善⇒アルカリ資材、貝化石等の投入
土づくりの三要素を考える~化学性その3~

土壌微生物とも密接な関係がある

⇒pH低:糸状菌 pH高:放線菌


EC:低 0.5dS/m以下EC:高 1.5dS/m以上
pH:低
5.5以下
石灰分・肥料分の不足窒素(硝酸)過剰
pH:高
7.0以上
石灰OK
窒素分の不足
石灰・肥料分共に過剰

土づくりの三要素を考える~物理性~

  • 土壌の三相分布(フカフカで水はけも水持ちも良くなるためには)
    固相:40% 液相:30% 気相:30%

    液相と気相は水分量で変化する
     ⇒大きな隙間:水はけ 小さな隙間:水持ち
      有効水:植物が吸収できる土壌水分

    土壌の硬さは固相の割合による
     ⇒固相多粘質土:植物の根張り難、排水透水性が悪い
     ⇒固相多砂質土:水持ちが悪、有効水が少

土づくりの三要素を考える~物理性~

堆肥の投入で⇒通気性・水持ち向上
結果:出芽率、初期生育の向上

中耕⇒除草と土壌へ酸素を供給

土壌中の気体:酸素2~21%(大気中21%)
       炭酸ガス0.1~10%(同0.03%)

酸素濃度:6%以下根の伸長阻害 2~3%停止
炭酸ガス濃度:1~2%最適 1%以下4%以上抑制

土づくりの三要素を考える~番外編?~

  • 炭素と窒素の関係 ⇒ C/N比(炭素率)
    炭素率を改善して連作障害、病害虫に強くなる!
     *堆肥の例⇒ 通常は20前後
     *畑土のC/N比は12前後

    C/N比が低い

    ⇒ チッソが多い(病害虫の発生のおそれ)
     微生物による有機物分解でチッソが放出(無機化)

    C/N比が高い

    ⇒ ほぼ有機質だけ(窒素飢餓の発生)
     土中のチッソが微生物に取り込まれる(有機化)

土づくりの三要素を考える~番外編?~

土壌改良の手段の一つとして! 肥料過多 ⇒ 炭素資材の投入

稲わら60牛糞16
もみ殻75豚糞11
米ぬか23鶏糞7
マメ科植物10~17コーヒー粕23
樹皮100~1300油粕7
おがくず134~1064茶粕12
剪定枝70ビール粕11
ピートモス52糸状菌9
280細菌・放線菌5

土づくりの三要素を考える!

  • 生物性と化学性
    ⇒肥料分は微生物で分解され植物に吸収される
  • 化学性と物理性
    ⇒土壌の状態で保持される肥料分の関連
  • 物理性と生物性
    ⇒微生物の代謝により団粒構造をつくる

土づくりの三要素を考える!

互いにバランスの良い関係を保つことにより地力となる

良い土を作るために出来ること


地力構成要素|改良対策

化学
肥料

無機
改良
資材


客土・深耕

輪作

堆肥の施用


化学性
養分供給
保肥力××
pH改善××


物理性
保水性××
通気性××
易耕性×


生物性
有用菌増加×××
有機物分解××××
病気の抑制××

肥料はバランスが大事

★最小律 1841年に提唱(約170年前)
 ドイツの化学者“リービッヒ”

 植物の成長と収量は、その土壌にある最も少ない要因に影響される

 未知要素 とは...ミネラルを含めたその他のことが考えられる

ドベネックの桶

ドベネックの桶

肥料を考える ~N チッソ・植物の栄養源~

  • 葉や茎の成長 ⇒ 吸収されるとアミノ酸となって移動
  • AN:アンモニア態チッソ NH4+ 土壌に保持 水稲に有利
  • NN:硝酸態チッソ NO3- 流亡しやすい 野菜類に有利
  • 過剰 ⇒ 葉は濃緑病気、害虫、連作障害、ガス発生
  • 不足 生育不良
  • 土壌中で分解、吸収されるには土壌微生物が関わる 
     ⇒ 硝酸菌、亜硝酸菌
  • 有機物が分解すると
     ⇒アンモニア態チッソ
     ⇒亜硝酸態チッソ
     ⇒硝酸態チッソ
     *最終的に無機のチッソ状態となって植物が吸収!
     注意!植物によってはアンモニア態窒素の状態で吸収するものもある
  • タンパク合成に必要なチッソ ⇒ 救世主はアミノ酸
     ⇒曇天、低温時にはアミノ酸の葉面散布補給で生育促進

硫安AN21%、塩安AN25%、硝安AN・NN17%、尿素TN46%

肥料を考える ~P・リン酸 花肥実肥~

  • 花や実の肥料
  • 植物体の糖の生成に関わる⇒エネルギーの対価として、ADP、ATP
  • 土壌に保持されるが...
     ⇒水溶性リン酸はスグ効くが、土壌中の鉄やアルミニウムと結合して
      結果的にスグ効かなくなる(特に酸性土壌)
     ⇒く溶性リン酸はゆっくり溶けて植物に吸収(クエン酸2%液で溶ける)
  • 過剰
     ⇒ 障害は出にくい、チッソが効きにくい(ネギ等で見られる)、黄化
  • 不足
     ⇒花・結実不良
  • 投入量はチッソの2倍程度に抑える
  • 土壌温度によって肥効が変わる(低温時は効きにくい)

~土壌の水分状態で肥効が左右される~

水田:春先に耕起して土壌を乾燥 ⇒ リン酸の肥効が高まる
畑地:土壌水分が乾燥気味 ⇒ 有効態リン酸の減少、生育の抑制

グアノリン酸:特殊肥料、30%弱(分析値)、低温時でも肥効を発揮(他と比較して)
過リン酸石灰:P16~20%、WP13%以上、第一リン酸カルシウムと硫酸カルシウムの混合物

肥料を考える ~K・カリ 根肥~

  • 根や茎を強くして耐病性を高める
  • 植物の開花、結実、登熟を促進する
  • 日照不足を補う
  • 植物体の水分調整
  • 植物体のタンパク、デンプン合成、移動、蓄積に関わる
  • 水溶性で流亡しやすい
  • 過剰
     ⇒症状は出にくい、Mg及びCaの吸収を阻害
  • 不足
     ⇒葉のまわりが黄化し枯れる、病気に弱くなる、水稲のイモチ、紋枯

炭酸カリ:植物の焼成灰、10~30%弱アルカリ性
     低温時でも肥効を発揮(他の資材と比較して)

  • 硫酸カリ:45%、畑作用肥料 
  • 塩化カリ:50%、水田用カリ

肥料を考える ~Mgマグネシウム エネルギー生産工場の作業員?~

  • 葉緑素の主要成分 ⇒ 光合成に深く関わる
  • リン酸の吸収、移動を補佐
  • 生育中期~生育後期に消耗が激しい
  • 過剰
      ⇒ ほとんどの圃場は過剰障害とは無縁
  • 不足
     ⇒ 光合成の低下による葉の黄化、生育障害の発生
  • 葉をエネルギー生産工場に例えたイメージとして
     ⇒マグネシウムは工場作業員
     ⇒チッソは作業員の食べるゴハン

水酸化マグネシウム:固形肥料 60%・弱アルカリ性
酢酸マグネシウム:15%前後・葉面散布肥料

苦土石灰:アルカリ分66%、苦土15%

*植物が根から吸収するマグネシウムの割合がある!
 カルシウム(CaO)28、マグネシウム(MgO)20、カリウム(K2O)47の分子量で表すと...
 Ca・Mg・Kは 約5:2:1(当量比)の割合で吸収される!

肥料を考える ~Ca・カルシウム 植物の骨格を形成~

  • 植物の細胞膜、細胞壁を作り強化
  • 吸収されてから植物体内の移動が遅い
     ⇒末端から欠乏症が出やすい
  • 過剰
     ⇒出にくいがMg、K、Pの吸収を阻害する
  • 不足
     ⇒新葉から発生、根がコルク症、尻腐れ、芯腐れ

水酸化カルシウム【消石灰】Ca(OH)2 + 炭酸ガスCO2
 ⇒炭酸カルシウム(貝化石)CaCO3 + H2O
炭酸カルシウム【貝化石】CaCO3 + H2O+炭酸ガスCO2
 ⇒炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2

貝化石(炭酸カルシウム):特殊肥料、アルカリ分35%、土壌中の炭酸ガスで溶けて土壌にやさしい石灰

炭酸カルシウム+水酸化苦土が最適に吸収される肥料
商品名:天然マグカル 10aあたり 40~60kg

*消石灰:アルカリ分60%、土壌を硬くする、強アルカリ性pH13
*炭酸カルシウム:アルカリ分50%⇒アルカリ性pH10、消石灰よりはマシ

肥料を考える ~誰でも知ってる光合成のハナシその1~

光合成とは?

光エネルギーを利用して、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)からデンプン(糖分)と酸素(O2)を作り出す!

光合成とは?

日中の太陽光が少ない曇天は...
 ⇒光エネルギーが減少
 ⇒エネルギー生産効率が悪化
 ⇒作物は正常に育たない...

そこで !!!

 エネルギー生産工場の...
 作業員(葉緑素)を増員する!
 Mgの葉面散布が効果アリ!

Mg葉面散布
商品名:お助けマグ
1,000~2,000倍希釈して散布

肥料を考える ~誰でも知ってる光合成のハナシその2~

光合成の反対とは? 実は植物も呼吸を行っている!

  • 植物は日中(昼間)光エネルギーを利用して光合成を行い糖分と酸素O2を作り出す!⇒ 光合成
  • 植物は動物と同様に、空気中の酸素を採りいれて養分(糖分)を消費する 呼吸 を行っている!
    注意!:日中は光合成量が多く養分が蓄えられるが夜間は呼吸による消費の方が多い!

日中の太陽光が少ない曇天が長期間続くと...量が多く養分が蓄えられるが夜間は呼吸による消費の方が多い!
 ⇒養分を蓄えるよりも消費が多くなる
 ⇒作物は正常に育たないばかりか、枯死のおそれも...

そこで !!!

土壌中から糖分の代わりになるものを吸収させる!

商品名:竹の王(竹を発酵させて作った堆肥)

※竹には糖分をはじめとするエネルギーが多い!
※発酵処理することで植物に効率的に吸収される!

肥料を考える ~吸収速度と必要時期~


栄養成長生殖成長

N

チッソ


多い 少ない

P

リン酸

 やや多  多

K

カリ

一定の量で必要とするが流亡しやすい

  • 花芽分化開始期
     ⇒ブドウ:5月中旬~6月下旬 りんご:7月上旬~8月上旬
  • 花芽分化は植物ホルモンのサイトカイニンが増えると多くなる
  • 葉面からの肥料吸収速度
    尿素:1~4時間 リン酸:6~15日 カリ:1~4日
    カルシウム:4日 マンガン:1~2日 亜鉛・モリブデン:24時間

土づくりの三要素から肥料以外に必要なモノ

  • 腐植を考える ⇒ ホントウは肥料以上に大事!

    腐植の量は土壌の地力を左右する

    ①養分の保持力が高まる ⇒ 肥料を効率的に利用
    ②腐植から養分が出てくる ⇒ 作物や土壌微生物の栄養源
    ③土壌の団粒化が促進 ⇒ 作物の生育に適した土壌環境
    ④pHの急激な変化を緩和する ⇒ 緩衝力が高まる

土づくりの三要素から肥料以外に必要なモノ

腐植物質 ~土壌の中の黒い部分~
 生物が微生物で分解された最終物質
酸で溶ける⇒フルボ酸 溶けない⇒フミン酸

堆肥の投入は...
 ⇒肥料を効率良く吸収させるための手段
 ⇒良質な堆肥の投入で賢い土壌改良!

農家の皆様に伝えたいこと!

  • 土は偉大である!
    土壌の微生物が有機物や肥料を分解 ⇒ 植物に吸収
    次の命の元を育んでいる! ⇒ 生命のサイクル
    微生物が活動しやすく共存できる土壌環境にする!

  • 土が健康
     ⇒ 病気や連作障害とは無縁
       持続可能な農業となる!

農家の皆様に伝えたいこと!

良い物を生産するために!
圃場をよく理解し
何をすべきか手段・方法を
よ~く考える!